社会人として働きながら、新たな挑戦を求めて海外留学を検討する人が増えています。海外留学には、語学力の向上やキャリアアップ、視野を広げるといった数多くのメリットがあります。
本記事では、社会人におすすめの海外留学の種類や費用の内訳、メリット・デメリットを詳しく解説するとともに、短期留学に最適な国についてもご紹介します。
ぜひ、自分に合った留学プランを見つけるヒントにしてください。
社会人向けの海外留学の種類
社会人が海外留学を考える際には、目的や時間的制約、費用などを考慮して、自分に合った留学スタイルを選ぶことが重要です。代表的な海外留学の種類を見ていきましょう。
長期留学
長期留学は、通常1年以上の期間をかけて語学力を徹底的に磨いたり、専門知識を深めるために実施します。社会人が長期留学を選ぶ場合は休職したり、退職後に行くケースがほとんどです。
長期留学は、費用と時間をかけて留学するため覚悟が必要です。そのため、将来へ向けてのスキルアップを目的に留学する人が多いです。
短期留学
数週間から数か月程度の短期留学は、忙しい社会人に最適なスタイルです。語学学校で集中的に学んだり、資格取得や専門的なスキルを学んだりできます。短期間ゆえに費用や時間の負担が少なく、比較的挑戦しやすい点が魅力です。
文部科学省が発表しているデータによると、渡航期間に関係なく留学全体の満足度は高い傾向にありますが、特に2週間以内の短期留学でも十分な満足度が得られていることが示されています。
大学生を対象とした平成25-28年度の調査では、留学満足度を最高評価の「達成できた」と答えた割合は、2週間以内の短期留学で42.2%と高く、9ヶ月以上の長期留学の40.5%を上回る結果となっています。
大学生を対象とした調査ではあるものの、短期留学は短期間ながらも充実した学びや経験を得られることがわかります。
出典:「日本人の海外留学の効果測定に関する調査研究」成果報告書 p.16 図5. 留学満足度×渡航期間|文部科学省
資格留学
国際資格や業務に直結するスキルを取得するための留学です。MBA(経営学修士)やTOEFL・IELTS対策コース、専門的な職業資格を目指すことが一般的です。
帰国後にキャリアアップを図ることを目的としているケースが多く、目的の資格取得によって期間は短期・長期と分かれます。
ワーキングホリデー
国によって異なりますが、多くは18-30歳限定で参加できる制度で、働きながら留学ができる点が特徴です。現地で収入を得ながら生活費をまかなうことが可能です。近年、円安の影響もあって海外でたくさんお金を稼げるということからワーキングホリデーに行く人は増えています。
国によってさまざまな条件があり、例えば、人気のオーストラリアのワーホリは、18-30歳が対象で、最長12ヶ月滞在可能です。1雇用主のもとでの就労は6ヶ月以内で、滞在中の十分な資金(約7,000豪ドル)が必要です。
参考:【2024年版】オーストラリアのワーキングホリデービザ情報|一般社団法人日本ワーキング・ホリデー協会
インターンシップ
海外での職場体験を通じて実務スキルを磨くプログラムです。多国籍企業や現地企業で働きながら、語学力や業務知識を学べます。特に外資系企業や国際ビジネス分野への就職を目指す人におすすめです。
外務省の国際機関人事センターの公式サイトでは、国際機関でのインターンシップや国連ボランティアに関する情報を提供しています。例えば、国際通貨基金のサマーインターン募集などが掲載されています。詳細な応募資格や募集期間については、サイトでご確認ください。
参考:国際機関におけるインターンシップ、国連ボランティア等|外務省の国際機関人事センター
ボランティア
社会貢献を目的とした活動を通じて異文化を学ぶ留学スタイルです。発展途上国での教育支援、環境保護活動などがあります。現地の人々との交流や語学学習にも役立ちます。
大学留学
大学や大学院に進学し、学士号や修士号を取得するための留学です。社会人が大学留学を目指す場合、専門性の高い分野の研究、資格取得を目的とする場合が多いです。特に大学院留学はキャリアアップに直結することが多いです。
社会人が海外留学するには
海外留学を実現するためには、自身の状況に応じた計画が必要です。以下に3つの主な選択肢を紹介します。
働きながら海外留学する
仕事を続けつつ、短期留学に挑戦するケースです。有給休暇や長期休暇を活用して、仕事を一時的に離れ、留学に参加する方法です。企業側が社員の留学に積極的であったり、職場の上司や同僚からの賛同が得られることが前提になります。
企業が費用を一部負担する「留学研修プログラム」を利用すれば、負担を軽減しながらスキルアップを目指すことも可能です。キャリアを中断する必要もありません。
例えば、株式会社日立製作所のように、海外若手派遣や海外業務研修など、多岐にわたる研修プログラムを実施している企業もあります。
休職して海外留学する
現在の職場を休職し、一定期間海外で学ぶ留学スタイルです。復職の約束があるため、離職に比べてリスクが少なく安心感があります。
復職後の労働条件やポジションなどについては会社側としっかりと話し合い、双方が納得できる形で進める必要があります。
離職して海外留学する
キャリアチェンジや新しい挑戦のために離職して留学する選択肢です。会社を辞めての留学は経済的・社会的なリスクは高まりますので不安に感じることもあるでしょう。
しかし、会社や仕事のことを考えることなく、全ての時間を学習や経験に注力できるメリットがあります。
社会人の海外留学にかかる費用
続いて、社会人の海外留学にかかる費用を見ていきましょう。
社会人の海外留学にかかる費用の内訳
海外留学の費用は主に学費、生活費、渡航費、保険料、ビザ取得費に分けられます。留学にかかる費用の目安を表にまとめました。
国や学校・履修科目によって留学費用は大きく変わります。欧米の大都市では物価、家賃なども高額になりますので、まとまった留学費用の準備が必要になります。
長期留学(6ヶ月) | 約120~160万円 |
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短期留学(1週間~2ヵ月) | 約30~100万円 |
資格留学(1年) | 約120〜300万円 |
ワーキングホリデー(1年) | 約100~140万円 |
インターンシップ(1年) | 約150〜300万円 |
ボランティア(1ヶ月) | 約30〜50万円 |
大学留学(1年) | 約200~1000万円 |
社会人の海外留学にかかる費用を節約するには
社会人の海外留学にかかる費用を節約するには、奨学金の活用や生活費の安い地域を選ぶことが有効です。
現地でのアルバイトやインターンシップを活用して収入を得る方法もあります。
社会人の海外留学のメリット・デメリット
次に、社会人の海外留学のメリット・デメリットを解説します。
社会人の海外留学のメリット
社会人が海外留学をすることで、キャリアアップにつながる可能性があります。
特にMBAや専門的な分野の学びを深めることで、職場での評価が高まったり、新しい分野への転職の道が広がったりすることがあるでしょう。
現地の環境で日常的に外国語を使用することにより、実践的な語学力が身につく点も大きな利点です。
異なる文化や価値観に触れることで、柔軟な思考力や多角的な視野が養われるため、これらは今後の仕事や人間関係にも良い影響を与えます。
加えて、世界中から集まる多様な人々と交流できるため、グローバルな人脈形成が可能になります。
社会人の海外留学のデメリット
一方で、海外留学にはいくつかのデメリットも存在します。
まず、時間と費用の負担が挙げられます。次に、職場から一定期間離れるため、復職後に職場の環境やポジションが変化している可能性があります。
特に長期留学の場合はこれらのデメリットが大きくなります。
さらに、海外環境に適応するのに時間がかかったり、日本での生活すらタイルとの違いからストレスを感じる場合もあります。
こうしたリスクを踏まえた上で計画を立てることが重要です。
社会人には海外短期留学がおすすめ
社会人にとって、海外短期留学は時間や費用の面で負担が少なく、現実的な選択肢となります。既婚者であっても、短期間であれば家族の協力を得やすくなります。
社会人の海外短期留学におすすめの国
文部科学省の平成16年のデータによると、日本人留学生のうち半数以上がアメリカを留学先に選び、さらにヨーロッパを含めると全体の約7割が欧米諸国に留学していることが明らかになっています。
出典:「『留学生30万人計画』の骨子」とりまとめの考え方に基づく具体的方策の検討(とりまとめ) 参考資料 2.基礎資料(データ)p.43 表|文部科学省
その他、近年社会人に人気の留学先として挙げられるのはオーストラリア、カナダ、ニュージーランドなどです。これらの国は教育の質が高く、英語が学べる、治安も良いことからおすすめできます。
アジアの国々は、比較的費用を抑えて留学できる点が魅力的です。学費や生活費が欧米と比べて安く、距離的にも近く留学の負担が少ない点もメリットです。
特に、フィリピンは費用対効果が高く、集中して英語力を身につけたい社会人に適しています。
キャリアに役立つ海外留学成功のコツ
社会人の海外留学の場合、現在の仕事を休職したり、思い切って退職してから留学に行くわけですので覚悟が求められます。
留学生活を実りあるものにし、帰国後のキャリアがさらに上向くように留学の成功をイメージしておくことが重要です。以下のようなポイントを抑えて留学準備をしておきましょう。
- 留学目的・ゴールを明確にする
- 勤務先に帰国後のキャリアプランを確認しておく
- 十分な留学費用と生活費用を貯金しておく
- 留学経験者の口コミ・体験談を参考にする
- 企業留学制度を利用する
- 英語力を日常会話レベルまでは身につけておく
- 最適な留学について留学エージェントに相談する
海外短期留学を成功させる第一歩は、丁寧な情報収集から始まります。留学や滞在ルールが頻繁に変わることもありますので、留学先の大使館サイトは要チェックです。
社会人の海外留学に関するよくある質問
最後に、社会人の海外留学に関するよくある質問をまとめました。
社会人留学をする前にやっておくべきことは?
留学のスタイルを問わず、目的や目標を明確にし、どのようなスキルや知識を得たいのかを具体化することが重要です。また、留学前にできるだけ語学力を高めておくことが、成功のポイントです。
留学以外の費用はどれぐらい準備しておけばいい
留学費用に加えて50万円~100万円ほどの預貯金があると安心でしょう。
留学中は予期せぬ出費が発生するかもしれません。現地での事故や病気、家族の問題などで一時帰国が必要になってお金が必要になるケースもあります。さらには資格取得、履修のために予定延長を希望することも考えられます。
留学前にやっておくべき手続きは
留学が長期になる場合、無駄なコストが発生しないように日本での生活を一区切りするための各種手続きが必要になります。
- アパート・マンションの解約
- 荷物の保管(実家、レンタルルームなど)
- 年金や失業保険、海外転出届などの行政手続き
- 郵便物の転送手続き
- 電気・ガスなど公共料金の停止手続き
- インターネットや電話などの解約手続き
日本の企業は語学力を必要としていない?
内閣府の調査によれば、企業が正社員に求める能力として「語学力」の重要性は1.5%と求められていないようです。
一方で、マネジメント能力・リーダーシップ(53.7%)やコミュニケーション能力・説得力(49.1%)が非常に重視されています。
出典:令和6年度 年次経済財政報告 第2-2-10 図企業側からみた正社員に今後求められる能力|内閣府
留学で会得した語学力は活かせないかもしれませんが、留学ではコミュニケーション能力の向上も期待できます。言葉も文化も異なる海外の人と満足に意思疎通ができ、輪に溶け込んだ経験があれば十分な強みになります。
半年以上の留学はキャリアのブランクになる?
なりますが、企業が見るのは留学期間中に何をしていたのかです。
「留学で何を得たのか」「何をスキルアップしたのか」「経験をどのように活かしたいのか」といった点をアピールして、留学に意味があったことを強調すれば強みになるでしょう。
まとめ
社会人の海外留学は、キャリアや人生に大きな可能性を広げる貴重な経験です。社会人の海外留学には短期語学留学から大学院留学まで多様な選択肢がありますが、社会人の留学で求められるのは留学後にキャリアアップにつながるかどうかです。
自分探しの旅のような気ままな留学ではなく、目的を持ってそれを遂行するための留学が重要です。また、どの国を選ぶのか、どこで学ぶのかということも大切です。
具体的な留学先が決まっていないようなら、留学エージェントに相談してアドバイスをもらうのも有効な手段です。無料相談が可能ですので、まずは一度問い合わせてみませんか。